ベンチャー企業の社長に言いたいたった一つのこと

1年前の2016年4月、僕は株式会社ブラックというベンチャー企業に就職した。その話は去年のブログにもちょこちょこ書いているので、もしよかったらみてください。

当時、株式会社ブラックは僕を含めて4人。僕は新入社員でありながら、肩書きだけは主任になっていたのである。社長はトシという40歳ぐらいの男性。(たぶん)大手の製薬会社に勤めた後、ベンチャー企業を立ち上げたのだ。トシは結構変わった性格で、どうしても好きになれなかった。このブログにも、入社2日目にして「この会社辞めるわ」と書いたぐらいである。

しかし、この会社が合わなかったのは僕だけではないと思う。というのも、1年後の現在、当時いた社員全員がこの会社を辞めているからである。

そんな株式会社ブラックであるが、僕が社長のトシに言いたいことがある。それは、「お前の夢を叶えるために俺たちは生きてきたわけではない」ということだ。

ベンチャー企業は一般的に大企業よりも待遇が悪い。給料も低いし、福利厚生もない。株式会社ブラックはもちろん、待遇はほぼ底辺である。ただ、これは社長の裁量でどうにかなる場合も結構ある。つまり待遇が低いのは、社長のトシが一切待遇改善をしようと思っていないからだ。

その言い訳なのかどうかは知らないが、トシは常にこう言っていた。

「ベンチャー企業は、待遇は良くないかもしれないけど、夢を叶えられる。」

この意識高い発言に対し、僕は猛反論したい。ここで言う夢というのは、お前の夢であり、俺の夢ではない。もしトシと似たような夢を僕が持っていたとしても、夢が叶った時の手柄は100%社長のトシに持っていかれる。会社というのはそういうものだ。社員が働くのは、とにかく待遇のためなのだ。

夢を叶えられる職業でも、待遇を良くすることはできる。パイロットなどそのいい例だと思う。夢と待遇は反比例であるとは限らない。

常にトシは、"ベンチャー企業"という言葉を使えばなんでも許されると思っているが全くの間違いだ。顧客も、その会社で働く社員であっても、ベンチャー企業だから許されるものはない。「ベンチャー企業は自由だよ」とかポジティブな内容で使うのは正しい使い方だが、「ベンチャー企業は待遇低いよ」というネガティブで使うのは正しい使い方ではない。トシはそこがわかっていないらしい。

トシは幾度となく、「土曜日来れる?」というような違法に近い発言をしてくる。もちろん給料など出ない。そんな馬鹿げた発言も、トシの夢を叶えるために僕が地球上に生まれてきたと彼が思っているからこそ、言えるのだ。

世は弱肉強食である。自分が生きるためであるなら、どんな相手でも殺すのが自然の掟だ。飢えたライオンを可哀想に思い、自ら喰われにいくシマウマなどいない。他人に協力するのは、自分にとってメリットがあるときなのだ。トシはそのことがよくわかっていなかったらしい。

僕も、会社を立ち上げることはなきにしもあらずなので、自分のために世界が回っていると思わないように、肝に銘じて生きていきたい。